2010年01月04日

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

監督・若松孝二。2007年日本。

60年代後半の学生運動から極左団体が生まれ、もはやイデオロギー闘争からかけ離れた山岳ベースでの暴力事件、それに続くあさま山荘立てこもりに発展した過程を「総括」した映画。

役者一人ひとりが役にかける尋常でない意気込みがギラギラ伝わってきて、最近の邦画を席巻しているTV企画の延長作品に出ているようなゆるい俳優たちとは一線を画している。とくに山岳ベース事件のシーンでは、森恒夫・永田洋子を筆頭とする連合赤軍メンバー内の狂気に圧倒される。

また、このシーンで何十回と繰り返される「総括」という言葉が、革命思想上の立場からの自己批判という意味合いから段々乖離して、リンチや処刑のトリガー・フレーズとなっていくのがなんとも不気味な演出だった。今後、「総括」という言葉を聞くたびにあの情景が蘇りそうだ。

しかし映画としてのテンションは山岳ベースをピークに下降してしまう。残念なことに、肝心のあさま山荘立てこもり自体にあまりインパクトがない。ちょっと青春ドラマっぽいテイストの演出に傾いているのが気になる。ここだけなら当時のニュース映像の方がよほど緊迫感に満ちているんじゃないだろうか。


posted by onion_slice at 17:52 | Comment(0) | ドキュメンタリー

ダイ・ハード4.0

車がスピンして飛んでくるのと、マクレーンが車で傾斜面を突進してヘリに突撃する2シーンはよかったけど、それ以外はグダグダすぎて目も当てられない有様。

あの予定調和すぎる物語パターンは何とかならんのか。ぬるい。古すぎる。
サイバーテロを主題にして今風にアレンジしてはいるけど、出てきた専門用語はせいぜいハッキングとかダウンロードとかアルゴリズムとかハブとか。あとはすべて、天才ハイテク集団が国家中枢システムを攻撃してますという雰囲気だけを演出している。

肉弾戦も緊迫感がない。さすがにブルースも50超えて動きがもそもそとおっさん臭くなってきている。ダイハード・シリーズは明らかに1>2>3>4と出来が一作ごとに悪くなっているのでここらでマクレーン伝説は幕引きにしたほうがよいと思う。

もし続けるならウィリスの娘を新たなタフ刑事として、オーバーホールしてほしい。娘といっても今回ルーシーを演じたメアリー・エリザベス・ウィンステッド(「グラインドハウス」にも出てたらしいが、記憶がない)ではなく、実娘で可哀想なことにデミ・ムーアよりブルースのDNAをより多く受け継いでしまったルーマー・ウィリスだが。この人は1988年と、「ダイハード」1作目の年に生まれているし、うってつけと思う。

そんでつまらんくせに無駄に長いな。どうせ日曜洋画劇場とかで見るとCM入りまくりで分断されるので、しょうもないシーンは大胆にハサミ入れて2hの尺に収めてほしい。


posted by onion_slice at 00:27 | Comment(0) | アクション
2010年01月03日

ミルク

監督ガス・ヴァン・サント、出演ショーン・ペン、ジョシュ・ブローリン、ジェームズ・フランコ、エミール・ハーシュ。2008年アメリカ。

「エレファント」や「パラノイド・パーク」から作風はがらりと変わるが、ガス・ヴァン・サント好みの題材で、内容も期待を裏切ってない。

ショーン・ペンは、巧いのは認めるが少々くどすぎると感じていたんだけど、この作品ではその持ち前のくどさがゲイの独特な雰囲気を出すのに役に立っていて、この人の演技を見直すよい機会になった。

ジェームズ・フランコは最初すっかりマット・ディロンかと思ってみていた。ディロンとペンのキスシーン!?すげぇ!とか興奮したが、さすがにこんな若くないよな、と途中で気づく。目が悪くなってきたのかもしれない。

昨日見た「チェンジリング」と全く違う作品だけど、正義や自由を求めて個人がアクションを起こし、権力の厚い殻を砕くパイオニアとなって政治に大衆をコミットさせていくテーマは共通している。両方ともよい映画だった。


posted by onion_slice at 17:53 | Comment(0) | 正統派ドラマ
2010年01月02日

チェンジリング

監督クリント・イーストウッド、出演アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、2008年アメリカ。

かなり脚色というか映画向けのお色直しはありそうな気がするが、80年前にこんなショッキングな出来事があったことに驚く。しかし単にショッキングな題材にはとどまらず、カフカの作品にでもでてきそうなほど不条理で硬直・腐敗した公権力にたいして主人公の女性が怯まずに立ち向かい正義を訴えていく姿が心を打つ。

事実、誘拐の異常な側面は比較的早く明らかにされるのだけど、凡庸な監督のように異常性をスキャンダラスに追うよりも、アンジェリーナ演じるクリスティン・コリンズがLAPDに対して裁判を起こし、彼らの人権侵害を認めさせるプロセスの描写に重点が置かれる。こういう人たちのアクションがあったからこそ、市民社会における諸々の権利が得られてきたんだと実感してしまう(もちろん、80年後も変わらず侵害は至るところで起きているが。足利事件然り。というか警察の無能さはまた別の話か)

クリスティンを異常扱いする警部をぴしゃりと黙らせる熱い弁論をうつ弁護士のシーンがいちばん好きだ。マルコヴィッチも好きだがこの弁護士さんが個人的にこの映画のMVP役者かも。

惜しいのは、尺がやや長く事件後の描写が冗長に感じることぐらいか。
2時間でピタリと収まっていればもっとよかった。あとは、個人的な好みでしかないと思うけどアンジェリーナ・ジョリーが好きになれない。「グッドシェパード」で好きになりかけてたけど、この佳作を見てもやはり好きというところまでいけない。ヒラリー・スワンクならもう少しよかったかもしれない。スワンクが演じるという話もあったそうだが、1920年代の婦人像にフィットするイメージを優先してアンジェリーナに決まったらしく、それはうなずける。


posted by onion_slice at 18:40 | Comment(0) | 正統派ドラマ
2009年12月19日

刑事コロンボ「毒のある花」

原題"Lovely But Lethal(1973)"。出演ヴェラ・マイルズ、マーティン・シーン、ヴィンセント・プライス。

化粧品会社の女社長ヴィヴェカ・スコット。かつての恋人で会社の研究者である青年カールに、共同経営者にしない限り新開発した皺取り薬の分子式を競争会社に売り渡すと脅迫を受け、衝動的に顕微鏡でカールを殴りつけ死なせてしまう。

トリックやアリバイ工作は特になく、単に殺しの動機・証拠を追いかけるだけの捜査展開で、コロンボVS犯人の対決の面白さも決して並以上のものではないが、出演者の豪華さに驚きだ。「地獄の黙示録」のM・シーンが被害者役で、犯人役が「サイコ」「捜索者」のヴェラ・マイルズ、競合会社の社長役にロジャー・コーマン系列の怪奇映画等に出ているヴィンセント・プライス。特にヴェラ・マイルズは当時40代半ばだがさすがの美貌。高飛車な感じの中にふわっと見せる媚びた感じの表情が素晴らしい。

2009年放映のエピソードはこれで完了。1月から始まり欠かさず見るだけでなくブログに記録することができた。あと20話ちょいですか。

エピソード満足度:7/10
posted by onion_slice at 20:42 | Comment(0) | TVシリーズ
2009年12月12日

刑事コロンボ「断たれた音」

原題"The Most Dangerous Match"(1973)。出演ローレンス・ハーヴェイ。

プライド高いチェスプレイヤー・クレイトンが、チャンピオン戦の前に対戦相手と試合して負け、本番でも敗れる恐怖に襲われホテルのゴミ処理施設に相手を投げ込み殺害を図る。

ここで殺害が完遂しないのがこのエピソードの特徴的なところ。犯人は相手が重体ながら生きていることを知り、トドメを刺しに来る。そしてトドメを刺しに来る手法がチェスの名手ならではの高等テクニックで面白い。

知性の高い犯人に対して、コロンボの実証主義的アプローチに基づく推理がぶつかる(レストランで行った塩と胡椒の瓶でのチェスで、どっちが胡椒=負けたはずの黒のプレイヤーだったかをほのめかすシーンは素晴らしい)。犯人を追い詰めるが、証拠がないためチェックメイトにできない。チェックメイトとなる状況はコロンボ得意の偶然による閃きから得られ、終局に向けて一気に攻めの手が続く。

これぞコロンボという、かなり正統派な対決パターンだった。

ちなみにwikipediaによると、ローレンス・ハーヴェイは撮影時胃癌が進行していたそうで、あの異様な苦悶の表情もうなずける。それから、ハーヴェイの娘はトニー・スコットの「ドミノ」でキーラ演じる主人公ドミノだそうだ。

エピソード満足度:8/10
posted by onion_slice at 21:07 | Comment(0) | TVシリーズ
2009年12月06日

グラン・トリノ

監督・主演クリント・イーストウッド、2008年。

こないだBSで「ダーティハリー」みたばかりで、37年後の作品を見るとすっかり爺さん化している。しかし、ウォルト・コワルスキーから伝わる無骨さと頑固さはハリー・キャラハンそのままで、それ以前のマカロニ・ウェスタンから綿々と続くイーストウッド演じるキャラクターの一貫したブレのなさに改めて驚いた。

デニーロのように物語の主人公に合わせて変化する器用さとは無縁で、何を演じても頑固一徹のアウトローにしか見えないわけだが、刑事だろうと退役軍人だろうとボクシングのトレーナーだろうとあの奥歯ぎりぎり噛みしめてる苦い顔で最後まで演じきり、どんな映画ジャンルでも自分のものにしてしまう異様な存在感は他に類をみない。

なので、この「グラン・トリノ」がイーストウッドの役者としての最後の作品になる可能性が高いという事実が残念でならない。と同時に、最後の役柄がもっともイーストウッドらしいスピリットに貫かれ、忘れがたいキャラクターになったことにほっとしてもいる。

それにしても「ブラッドワーク」ぐらいから後の作品は本当にハズレがない。長年のパートナーであるトム・スターンの撮影技術も安定していて、イーストウッドの撮りたいものが分かりすぎるほど分かってるな、というのが一つ一つのカットから伝わってくる。

オーソドックスな作品で、似たようなのは世の中に山ほどありそうなものだが、作る人が作るとこれだけのものができる。「MDB」もそうだったが、言葉にしがたいこみ上げてくるものがあり、最後にはしっかり泣かされてしまった。次は「チェンジリング」見よう。


posted by onion_slice at 14:44 | Comment(0) | 正統派ドラマ