2009年05月31日

麦の穂をゆらす風

監督ケン・ローチ、出演キリアン・マーフィ他。2006年、UK映画。

1920年代のアイルランドの大英帝国への抵抗運動を描いた作品。
21年の愛英条約を前後にして、かつては一緒に血を流し戦った兄弟と仲間が、条約に対する政治的立場の違いから敵味方に別れて殺しあう悲劇へと突き進んでいく。

重要なテーマだし素材はいいと思うが、演出がどうもベタすぎるな。
引き裂かれた兄弟愛みたいなのをこれみよがしに盛り込んでるせいか、感動の押し売りが多少鼻につく。

それと、テディが拷問の後に抵抗運動から身を離していく転向についてももう少し描写がほしかったところで、条約に対する兄弟陣営の議論のシーンひとつで済ませて一足飛びにお互い分かれて戦うことになるっていうのがぎこちなく感じた。

悪い映画ではないけれど、感動ドラマの厚化粧が濃いのと、演出技巧的に粗さが目に付く。一応2006年カンヌのパルムドールなのだが。


posted by onion_slice at 16:08 | Comment(0) | 戦争
2009年05月30日

刑事コロンボ「犯罪警報」

原題"Caution: Murder Can Be Hazardous to Your Health"(1991)

視聴者参加型の犯罪摘発番組の司会を務める人気パーソナリティが、昔ポルノ男優をしていた過去をライバルキャスターにかぎつけられ、番組を降りるよう脅迫されたことからタバコに毒薬を仕込み殺害する。

犯人役(ジョージ・ハミルトン:ゴッドファーザー3にも出ているらしい。そういわれるとなんとなく見たことありそうな顔立ち)もトリックも大して面白くない。
ニコチンサルフェート入りのタバコによる毒殺をごまかすため、吸殻を差し替えるときに吸い跡のないタバコを使うというのがいかにもお粗末。

ここのところ駄作率が高く、いい加減、新シリーズへの期待値が低くなってきているわけだが、来週「初夜に消えた花嫁」は多少毛色の違った作品のようだ(犯人が最初から分からない構成?)。

エピソード満足度:4/10
posted by onion_slice at 22:24 | Comment(0) | TVシリーズ

「パンと裏通り/トラベラー」

キアロスタミの処女短編・長編の「パンと裏通り(1970)」「トラベラー(1974)」を見る。

「パンと裏通り」はたった13分の作品だが、その後のキアロスタミのユニークな映画センスがたっぷり濃縮されて詰まっている。ビートルズの"Ob-La-Di,Ob-La-Da"のジャズ版みたいなのが流れる中、買い物にいく少年が石蹴りをしていくあのシーンだけで、瞬時に映画的幸福感を満たしてくれる。

「トラベラー」は、サッカーのチケットを手に入れるために親も友達もだまして苦い目にあう少年の話で、可哀想な結末には同情しながらも可笑しい気分にさせられる不思議なユーモアがある。

とにかく子供の使い方にかけては映画史上まれにみる天才というしかない。ハリウッドの子役に見られるこましゃくれた演技臭とは対極にあるあの天真爛漫な子供らしさはどうやって演出しているんだろう、と映画を見ている間中も見終わった後も、解けない謎のように頭から離れない。

この人の映画を久しぶりに見るとやはり面白く、続けて、代表作の「友だちのうちはどこ?(1987)」と、その続編であり90年のイラン大地震のドキュメンタリーでもある「そして人生はつづく(1991)」も連続で見てしまった。


posted by onion_slice at 11:30 | Comment(0) | アジア
2009年05月29日

ロゼッタ

監督:ジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ、主演エミリー・ドゥケンヌ、オリヴィエ・グルメ他。1999年、フランス・ベルギー。

貧困のきわみに置かれている悲惨な少女の絶望を、無駄な虚飾を省いて非常にストイックに撮っている。ひたすら不安定なカメラワークといい、「ドイツ零年」を思わせる独特なレアリズム描写だ。
最後の自殺の試みの描き方が、間接的な表現で一見わかりづらいが、単に見ている人にショックを与えるのではなく、少女の心理と行動について多用な解釈を生じさせる効果を与えるよう巧く練られている。

見ている最中よりも後からじわじわと効いてくるタイプの映画。


posted by onion_slice at 23:42 | Comment(0) | ヨーロッパ
2009年05月23日

刑事コロンボ「大当たりの死」

原題"Death Hits the Jackpot"(1991)

株で大損こいた男が、甥の当てた3000万ドルの宝くじをぶんどり、事故に見せかけて殺す。

チンパンジーをつかったオチはなかなか面白いけど、全体としては退屈。
犯人役は「メン・イン・ブラック」などにも出ているリップ・トーン。

エピソード満足度:4/10
posted by onion_slice at 21:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | TVシリーズ
2009年05月20日

リトル・チルドレン

監督トッド・フィールド、出演ケイト・ウィンスレット、パトリック・ウィルソン、ジェニファー・コネリー。2006年アメリカ。原題"Little Children"

CSで何気なく見たが素晴らしい映画だった。
子供もいて、いい年こいた大人なのに大人になりきれず自分の人生に飽き飽きしている主人公の壊れかけた日常が、地味な演出ながらものすごく繊細に描かれている。

同じトッド仲間のトッド・ソロンズの好んで撮るようなアメリカのアブノーマルな側面をよりシリアスに捉えた作風ってとこかな。ちなみに、ソロンズの"Happiness"に出ていたジェーン・アダムスが脇役で出ていたりする。この女優はマイナーだがかなりよい。それにしてもトッド・ヘインズなんて似た名前のやつもいるので間違いやすいこのトッド3人衆だが、それぞれ個性的な映画を撮るやつらだ。


posted by onion_slice at 23:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 正統派ドラマ
2009年05月17日

バファロー大隊

監督ジョン・フォード、出演ジェフリー・ハンター、コンスタンス・タワーズ、ビリー・バーク他。原題"Sergeant Rutledge"(1960)

BSで見る。こういうDVDで見れない渋い映画をやってくれるとうれしい。

作品は、アパッチ襲撃のさなかレイプのうえ殺害された白人少女をめぐり、逮捕された黒人曹長ラトレッジが軍法会議にかけられる姿を描いている。

ラトレッジ自身は無罪なのだが、白人社会で何を言っても通用しないだろうとだんまりを決め込み、彼の白人の兵士仲間が弁護士を引き受けラトレッジの嫌疑を晴らすという、人種を超えた絆が熱い。いまから半世紀前の映画だがしっかりとレイシズムを見据えた作品である。

テーマ性が深いうえ、裁判ものとしても面白く、かつ真犯人が実は法廷内に潜んでいるというミステリっぽい要素もあり、さらに物語形式はひとつの事件を各証人の視線から分断して描くという「羅生門」っぽい心理描写に秀でていて、一粒で2度ならず何度もおいしい異色の西部劇になっている。

録画で残しておけばよかった。。
posted by onion_slice at 15:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック

刑事コロンボ「影なき殺人者」

原題"Columbo and the Murder of a Rock Star"(1991)

裁判で負けたことない弁護士が元ロックスターの愛人の浮気に腹を立て殺害し、浮気相手の若者を犯人に仕立て上げようとする。

うーむ。大して特筆すべき点がない。というか、特筆すべき点があるとすれば最後のお面というオチの酷さかもしれない。さすがにこれはないだろ。

段々新シリーズは飽きてきたな。なぜか旧作をお預けにしてつまらん作品の多い新シリーズを連続で放映するNHKの変なプランに視聴者が離れてないか心配だ。

エピソード満足度:3/10
posted by onion_slice at 00:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | TVシリーズ
2009年05月10日

エネミー・オブ・アメリカ

やはり面白いな、トニー・スコット。日曜の夜の締めにはぴったりの痛快アクションだった。

NSAとギャングを鉢合わせさせるバトルシーンはさすがで、「トゥルーロマンス」好きな人には素晴らしいサービス。久しぶりに見たくなった。

衛星監視システムは、2006年作の「デジャブ」でより進化した形で登場するので未見の人は見てほしい。主役がウィルではなくデンゼルなので、本作よりもちょっぴりシリアスなトーンが強い。


posted by onion_slice at 23:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | アクション

ランジェ公爵夫人

監督ジャック・リヴェット、出演ギョーム・ドパルデュー、ジャンヌ・バリバール。原題"Ne touchez pas la hache"(2007)

マヨルカ島で出会う修道女とナポレオン配下の将軍モントリヴォーの間に何があったのか。
修道院での二人の対峙から過去に遡り、社交界の花形夫人を修道女に変えた悲恋物語が語られる。

社交界に出入りする人妻という身分の束縛から自分を解放するために許されない恋愛に手を染めるが、自分の気位を崩すことを欲さず、あくまでも戯れの恋愛ゲームを貫こうとする。が、ゲームがゲームとして続かなくなると相手への愛情で押しつぶされそうになるこの可哀想な公爵夫人。作中でミシェル・ピコリが言う身分上のルールと感情の間でバランスを取れず自己崩壊していく姿が、痛ましくも美しい。

難しい立場にある女性の微妙かつ複雑な心境を、台詞に頼らず表情や仕草だけで伝える表現の仕方は感銘を受ける。
ドパルデューも父親に引けをとらない繊細な魅力に満ちていて、亡くなったのが惜しい。

「地に堕ちた愛」等でもコンビを組んでいるウイリアム・ルプチャンスキーの撮影技術も完璧で、ここ数年のフランス映画としては個人的に最大のヒットだった。


posted by onion_slice at 11:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ
2009年05月09日

刑事コロンボ「かみさんよ、安らかに」

原題"Rest in Peace, Mrs. Columbo"(1990)

かつて夫をコロンボに逮捕された不動産業の女ヴィヴィアン(ヘレン・シェイヴァー)。獄中死した夫の無念を晴らすため、まず夫の犯罪を密告した知人のチャーリーを殺した後、捜査担当のコロンボに近づき彼の妻の毒殺を企て復讐を図る。

コロンボ夫人の葬儀からドラマが幕を開け、夫人に何が起こったかを過去に遡りつつ物語っていくというユニークな設定。

この作品が属する第9シーズン(1989−1990)と分類されているシリーズでは他にも、画家に殺された被害者の悪夢をシュールレアリズムっぽく映像化(「殺意のキャンバス」)したり、コロンボが加害者のでっちあげ犯罪にだまされる話(「だまされたコロンボ」)があったりと、変わった趣向を凝らした構成になっているエピソードが多い。

刑事物の犯罪トリックは、長いシリーズであるほどマンネリ化が顕著になるので、飽きさせないストーリーテリングの工夫を入れるのは評価できる。

さて、脇役ながら印象の濃いイアン・マクシェーンなる俳優が出ていて、どこかで見たようなと思ったらつい最近見たアレンの「タロットカード殺人事件」で冥界から事件を追う熱血デカ役のおっさんであった。マイナーな俳優をまったく異なるプロダクションの作品で続けて見ることになる映画的偶然にちょっと驚きです。

エピソード満足度:7/10
posted by onion_slice at 21:22 | Comment(0) | TrackBack(1) | TVシリーズ

無ケーカクの命中男

監督ジャド・アパトウ、主演セス・ローガン、キャサリン・ハイグル。原題"Knocked Up"(2007)

邦訳の通り、ナンパした女との一夜で運悪く命中させてしまった無ケーカク男の話。

はらんでしまった(英語で"knocked up"というらしい)女アリソン(ハイグル)にとってみれば、酔った勢いが醒めてみると相手のベン(ローガン)が全然タイプでない。経済力もなく、駄目な友人と半エロサイト運営して生計を立てることをもくろみながら遊んで暮らしているしょうもない男で、8週間後に妊娠に気づいたときは人生が終わったかのように愕然とする。

不運に打ちのめされながらも、赤ん坊をつくってしまったという動かぬ現実を受け止め、自己中な男女がお互いを知り責任をもって家庭を築こうと奮闘していくのがユーモアたっぷり描かれていて楽しい。笑いをしっかり取りながら泣きどころも押さえたコメディの王道パターンで、個人的にいちばん好きなジャンルである。出産シーンではおかしいんだけど涙が出てくる泣き笑い状態になってしまった。

こういうのを見ると、こないだ見た「バベル」なんかがますます、イカサマ臭い家族愛を大仰に演出しただけのウンコ映画に思えてくる。

同じ監督の「40歳の童貞男」は未見だが、これは是非見なければなるまい。


posted by onion_slice at 16:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | コメディ
2009年05月06日

ヒューマン・ネイチュア

監督ミシェル・ゴンドリー、脚本チャーリー・カウフマン、出演パトリシア・アークエット、ティム・ロビンス。2001年。

毛むくじゃらの女性が主人公のラブコメということでキワモノ扱いして見てなかったのは失敗だった。なかなかの面白さ。
性欲に溺れる登場人物たちの滑稽さをこれでもかと描いていて、遺伝子的には大して変わらない類人猿と人を区別するのは野生と文化の違いだという通念を笑い飛ばすような皮肉たっぷりのエキセントリックなコメディになっている。

まじめ一筋で生きてきたがライラ(アークエット)との出会いをきっかけに色欲に猛進していく博士役のティム・ロビンスがよい。それから博士を誘惑するフランス娘ガブリエル(ミランダ・オットー)がセクシーで可愛い。聞かない名前だが「宇宙戦争」に出ている女優のようだ。


posted by onion_slice at 14:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | コメディ

バベル

監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。主演ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット他。2006年。

中身のしょうもなさに比して無駄に尺の長い映画で参った。

まず、アメリカ、メキシコ、モロッコ、日本で起こる1個1個の話が面白くもなんともない。で、それらの出来事を数珠繋ぎにしてもっともらしく家族の不和、現代人のディスコミュニケーションという枠に嵌め込もうとするんだけど、どうもお仕着せの悲劇を厚化粧のようにぺたぺた塗りたくるだけでテーマが空回りしている印象を受ける。そして悲劇のバーゲンセールが2時間半続いた後は、しまりのない脚本に無理やり終着点を与えるかのような和解のハグでハッピーエンドだ。これは、役所広司の猟銃のプロット同様に強引すぎる。

うーん。「アモーレス・ぺロス」と「21グラム」は面白かったような気がするんだけど、どうだったっけ?あまり覚えていない。。


posted by onion_slice at 00:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 正統派ドラマ
2009年05月05日

僕のニューヨークライフ

監督ウディ・アレン。主演ジェイソン・ビッグス、クリスティーナ・リッチー。原題"Anything Else"(2003)

NYの若手コメディ作家ジェリー(ビッグス)が浮気性の彼女アマンダ(リッチー)に苦しめられ、年上の作家仲間ドーベル(アレン)に助言を受けながら苦難を切り抜けようとする。

アレンの映画の特徴である知的な意匠と皮肉をちりばめた饒舌な台詞回しは相変わらずだが、ほとんどは単に饒舌なだけでユーモアの切れ味を欠いていてつまらない。結果として、笑いどころもなくテンポもつまり気味な質の低いコメディになっている。

ジェイソン・ビッグスがあまり好きになれない。まあ主人公の設定として、寝取られて嫉妬から狂気の行動に走る悲劇型でもショックから駄目になっていくルーザー型でもでもないので、これぐらいぱっとしないニュートラルな役者がちょうどいいんだろうけど、なんというか薄すぎて映画見終わったあと印象がまったく残っていない。

クリスティーナ・リッチーの使い方も微妙。ジェリーと寝るのを過呼吸でごまかして拒否るシーンだけはちょっと面白い。


posted by onion_slice at 16:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | コメディ
2009年05月04日

刑事コロンボ「完全犯罪の誤算」

原題"Agenda for Murder"(1990)

弁護士オスカー・フィンチ(パトリック・マクグーハン)は下院議員ポール・マッキーが地方検事だった頃からお互いの便宜を図りあう仲で、大統領選に出馬する知事の後ろ盾を得て、マッキーは副大統領、フィンチは法務大臣のポストを獲得できるよう二人で画策している。そんなおり、フィンチの元へ犯罪で起訴されている依頼人フランクが現れるが、裁判に勝ち目はなく弁護を拒否すると、フランクはフィンチとマッキーによる証拠隠滅を持ち出し脅迫をほのめかす。フィンチは自殺に見せかけフランクを銃殺する。

「祝砲の挽歌」等いくつかのエピソードに出ているP.マクグーハン。冷静さを決して失わずコロンボと対峙する知的な犯人役が似合う。こんな犯人には、状況証拠による推理を補強するためコロンボがしばしば使うはったり作戦は通用しないと思ったのか、ゴミ箱をあさって物的証拠を用意し、さらに弁護士先生を納得させるため噛み跡で有罪立証がなされた判例をしっかり見つけてきて突きつける入念ぶり。

それにしても、犯行現場から私的にちょろまかした高級チーズだが、あのときすでに噛み跡を見つけていたのか、家に帰って食おうとして気づいたのかどっちなのだろう。

エピソード満足度:6/10
posted by onion_slice at 20:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | TVシリーズ

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