2010年01月30日

刑事コロンボ「闘牛士の栄光」

原題"A Matter of Honor(1976)"、出演リカルド・モンタルバン。

元闘牛士ルイス・モントーヤと、闘牛の介添え役としてパートナーを務めるエクトール・ランヘルは長年のパートナー。エクトールの息子クウロがリングで牛に倒され気を失い二人は助けに入るが、ルイスはすくみあがってしまいエクトールが一人で息子を助ける。無様な姿を見られたプライド高きルイスはエクトールの殺害を企てる。

ロケーションはメキシコ。コロンボのホームグランドではないが、休暇中に車で事故を起こしてしまい知り合った現地の警官と行動をともにするうち、闘牛に絡んだ事件に遭遇して首を突っ込んでいく。

特殊な回で、せっかくのメキシコロケだから90分枠にしてもよかったのではないか。現地のメキシコ警官と、文化的にかみ合わないながらもタッグを組んで捜査を進めていく、というようなストーリー上の味付けをちょっと期待したのだが、結局ほとんどコロンボが一人で解決パターンだった。

しかしこれは単なる個人的願望なのでどうでもよく、内容はよい。牛を追い立てる木の道具の破片や、気象情報から犯行の状況を具体化していく推理力が驚異的だ。

最後は、物的証拠に欠けるときのお得意嵌めこみパターン。名誉や面子を重んじる犯人の性格を研究し、それらが打ち砕かれたときに素直に罪を認めざるを得なくなるという状況を作り出すことで事件に幕を引く。
この、犯人の性格を知悉して行動を読む力がすごいんですよね。

エピソード満足度:8/10
posted by onion_slice at 20:54 | Comment(0) | TVシリーズ
2010年01月23日

刑事コロンボ「ビデオテープの証言」

原題"Playback"(1975)、出演オスカー・ウェルナー、ジーナ・ローランズ。

電子機器会社の女会長マーガレット・ミーダスは、社長であり娘婿であるハロルドの性格と経営手腕のなさに愛想をつかし、実の息子アーサーを新社長にすることを決意。それを聞いたハロルドはマーガレットを殺し、家の防犯カメラを使ったアリバイトリックを仕組む。

当時としてはハイテクの最先端のようなエピソードだったんだろうか。防犯カメラ、音に反応して自動で開くセンサ付ドア、階段と並行する車椅子専用の可動式スロープを備えたガジェット屋敷。そしてハロルドが見せびらかすデジタル腕時計。

ハイテクを扱った作品は十年以上経つと見るに耐えなくなるのがつらいところで、「愛情の計算」にしても本作にしてもアリバイトリックは今の人なら誰もが瞬時にわかってしまう。

ただ、そのトリックの暴き方は魅力の色あせないコロンボらしい推理力が発揮されているので満足のいく内容だった。

犯人の視点から始まり、刑事の視点に切り替わる構成をもつ一本の推理ドラマとして見ている側にとっては、事件の点と線は気持ちよくつながるわけだが、実際の現場で複数人のあやふやな時間証言・目撃証言や、分断された状況証拠をつなぎあわせて事件の真相を暴き出すのは尋常でない頭脳を要すると思う。しかも、コロンボみたいにほぼ一人でやり遂げ、犯人へのプレッシャーのかけ方も心得ている刑事というのは、現実のおまわりさんの中でどれぐらい存在するんだろう。

それにしてもフォークとオスカー・ウェルナー、ジーナ・ローランズの3ショットは贅沢だった。ローランズが夫の悪事を知ったときに涙を流すラストショットはかなり心を打つ。

エピソード満足度:7/10
posted by onion_slice at 20:48 | Comment(0) | TVシリーズ
2010年01月16日

刑事コロンボ「第三の終章」

原題"Publish or Perish"(1974)、出演ジャック・キャシディ、ミッキー・スピレイン。

ベストセラー作家アラン・マロリーが自社との契約を打ち切り、ライバル社から新作を出すことを知った出版社社長グリーンリーフ。爆弾製造マニアの男を操りマロリーを殺させ、自らは犯行時刻に自動車事故を起こすことでアリバイ工作し完全犯罪をもくろむ。

久しぶりにトリック面で見ごたえのあるエピソードだった。自分を犯人に仕立てて陥れようとする者がいるという状況を段々演出し、最後にその者を事故に見せかけて殺し、警察の自分への嫌疑を晴らさせようとするという、作中のベストセラー作家も顔負けの構想力だ。鍵を使った複雑な仕掛けは頭の中がごちゃごちゃになってくるけど、ヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ!」に通じる古典的な犯罪トリックの醍醐味が感じられてとても面白い。

この冷酷な知性をもつ犯人役は、「構想の死角」でもおなじみのジャック・キャシディ。ギラついた悪人面がよい。殺される作家を演じるのは探偵マイク・ハマーの作家ミッキー・スピレイン。爆弾青年もサイコなオーラがばんばん出ていて名演だ。

そして次回放映は、オスカー・ウェルナー&ジーナ・ローランズというすんごい組み合わせ。楽しみで仕方ない。

エピソード満足度:8/10
posted by onion_slice at 20:44 | Comment(0) | TVシリーズ
2010年01月09日

刑事コロンボ「愛情の計算」

原題"Mind Over Mayhem"(1974)、出演ホセ・フェラー。

シンクタンク所長ケーヒルは、息子の研究業績が他人の成果を横取りしたものであることをかぎつけた知り合いの化学者の口を封じるため、強盗に見せかけて殺人を冒す。

ロボットをアリバイに使うのがポイント。天才少年の知恵を借りて偽装アリバイの仕掛けに気づくコロンボだが、犯罪を裏付ける肝心の物的証拠に欠く。最後はお得意のブラフで知性の高い犯人を降伏させる。

犯行現場に残されたマッチ棒を見たときにほとんど犯人像を絞っていたというコロンボの観察能力がすごいのと、最後の嵌め技がコロンボのブラフの中でもかなりダーティなのと、なかなかの良エピソード。犬とか天才少年とかロボットとかキャラに色彩もあって面白い。

エピソード満足度:7/10
posted by onion_slice at 21:03 | Comment(0) | TVシリーズ
2010年01月04日

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

監督・若松孝二。2007年日本。

60年代後半の学生運動から極左団体が生まれ、もはやイデオロギー闘争からかけ離れた山岳ベースでの暴力事件、それに続くあさま山荘立てこもりに発展した過程を「総括」した映画。

役者一人ひとりが役にかける尋常でない意気込みがギラギラ伝わってきて、最近の邦画を席巻しているTV企画の延長作品に出ているようなゆるい俳優たちとは一線を画している。とくに山岳ベース事件のシーンでは、森恒夫・永田洋子を筆頭とする連合赤軍メンバー内の狂気に圧倒される。

また、このシーンで何十回と繰り返される「総括」という言葉が、革命思想上の立場からの自己批判という意味合いから段々乖離して、リンチや処刑のトリガー・フレーズとなっていくのがなんとも不気味な演出だった。今後、「総括」という言葉を聞くたびにあの情景が蘇りそうだ。

しかし映画としてのテンションは山岳ベースをピークに下降してしまう。残念なことに、肝心のあさま山荘立てこもり自体にあまりインパクトがない。ちょっと青春ドラマっぽいテイストの演出に傾いているのが気になる。ここだけなら当時のニュース映像の方がよほど緊迫感に満ちているんじゃないだろうか。


posted by onion_slice at 17:52 | Comment(0) | ドキュメンタリー

ダイ・ハード4.0

車がスピンして飛んでくるのと、マクレーンが車で傾斜面を突進してヘリに突撃する2シーンはよかったけど、それ以外はグダグダすぎて目も当てられない有様。

あの予定調和すぎる物語パターンは何とかならんのか。ぬるい。古すぎる。
サイバーテロを主題にして今風にアレンジしてはいるけど、出てきた専門用語はせいぜいハッキングとかダウンロードとかアルゴリズムとかハブとか。あとはすべて、天才ハイテク集団が国家中枢システムを攻撃してますという雰囲気だけを演出している。

肉弾戦も緊迫感がない。さすがにブルースも50超えて動きがもそもそとおっさん臭くなってきている。ダイハード・シリーズは明らかに1>2>3>4と出来が一作ごとに悪くなっているのでここらでマクレーン伝説は幕引きにしたほうがよいと思う。

もし続けるならウィリスの娘を新たなタフ刑事として、オーバーホールしてほしい。娘といっても今回ルーシーを演じたメアリー・エリザベス・ウィンステッド(「グラインドハウス」にも出てたらしいが、記憶がない)ではなく、実娘で可哀想なことにデミ・ムーアよりブルースのDNAをより多く受け継いでしまったルーマー・ウィリスだが。この人は1988年と、「ダイハード」1作目の年に生まれているし、うってつけと思う。

そんでつまらんくせに無駄に長いな。どうせ日曜洋画劇場とかで見るとCM入りまくりで分断されるので、しょうもないシーンは大胆にハサミ入れて2hの尺に収めてほしい。


posted by onion_slice at 00:27 | Comment(0) | アクション
2010年01月03日

ミルク

監督ガス・ヴァン・サント、出演ショーン・ペン、ジョシュ・ブローリン、ジェームズ・フランコ、エミール・ハーシュ。2008年アメリカ。

「エレファント」や「パラノイド・パーク」から作風はがらりと変わるが、ガス・ヴァン・サント好みの題材で、内容も期待を裏切ってない。

ショーン・ペンは、巧いのは認めるが少々くどすぎると感じていたんだけど、この作品ではその持ち前のくどさがゲイの独特な雰囲気を出すのに役に立っていて、この人の演技を見直すよい機会になった。

ジェームズ・フランコは最初すっかりマット・ディロンかと思ってみていた。ディロンとペンのキスシーン!?すげぇ!とか興奮したが、さすがにこんな若くないよな、と途中で気づく。目が悪くなってきたのかもしれない。

昨日見た「チェンジリング」と全く違う作品だけど、正義や自由を求めて個人がアクションを起こし、権力の厚い殻を砕くパイオニアとなって政治に大衆をコミットさせていくテーマは共通している。両方ともよい映画だった。


posted by onion_slice at 17:53 | Comment(0) | 正統派ドラマ
2010年01月02日

チェンジリング

監督クリント・イーストウッド、出演アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、2008年アメリカ。

かなり脚色というか映画向けのお色直しはありそうな気がするが、80年前にこんなショッキングな出来事があったことに驚く。しかし単にショッキングな題材にはとどまらず、カフカの作品にでもでてきそうなほど不条理で硬直・腐敗した公権力にたいして主人公の女性が怯まずに立ち向かい正義を訴えていく姿が心を打つ。

事実、誘拐の異常な側面は比較的早く明らかにされるのだけど、凡庸な監督のように異常性をスキャンダラスに追うよりも、アンジェリーナ演じるクリスティン・コリンズがLAPDに対して裁判を起こし、彼らの人権侵害を認めさせるプロセスの描写に重点が置かれる。こういう人たちのアクションがあったからこそ、市民社会における諸々の権利が得られてきたんだと実感してしまう(もちろん、80年後も変わらず侵害は至るところで起きているが。足利事件然り。というか警察の無能さはまた別の話か)

クリスティンを異常扱いする警部をぴしゃりと黙らせる熱い弁論をうつ弁護士のシーンがいちばん好きだ。マルコヴィッチも好きだがこの弁護士さんが個人的にこの映画のMVP役者かも。

惜しいのは、尺がやや長く事件後の描写が冗長に感じることぐらいか。
2時間でピタリと収まっていればもっとよかった。あとは、個人的な好みでしかないと思うけどアンジェリーナ・ジョリーが好きになれない。「グッドシェパード」で好きになりかけてたけど、この佳作を見てもやはり好きというところまでいけない。ヒラリー・スワンクならもう少しよかったかもしれない。スワンクが演じるという話もあったそうだが、1920年代の婦人像にフィットするイメージを優先してアンジェリーナに決まったらしく、それはうなずける。


posted by onion_slice at 18:40 | Comment(0) | 正統派ドラマ

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