2008年06月01日

「タイム・オブ・ザ・ウルフ」

またミヒャエル・ハネケの作品を見る。

これまた最初から最後まで陰鬱の一言に尽きる作品だった。
詳しい背景は語られないが、水質汚染と食糧不足のカタストロフに見舞われたヨーロッパの田舎で、夫を殺された妻(イザベル・ユペール)と娘・息子が放浪する。同じように行き場のない難民たちが線路脇の掘建て小屋に集い、いつか列車がきて彼らを絶望の地から連れ去ってくれるとはかない希望を抱く。

この掘建て小屋での難民の生活の描写が、ハネケ独特の暗く、緊張感に満ちた視点に満ちている。物語的に面白いことがおきるようなエンターテインメント要素は皆無で、見ている間はひたすら登場人物たちの殺伐とした心理の綾や憎悪の只中にさらされてるような不快感だけがある。しかし、人間の汚い部分だけを好んで描きたがるだけの厭世的な作品というわけでもなく、途中で出てくるレイシスト男がラスト近くで自殺を図ろうとする少年を慰めたりと、シロとクロで割り切れない複雑な人間描写がハネケらしい。

基本的に余計なカットは入れず、オフスクリーンで語りたがる監督なのだが、それだけに突然レイプシーンとか馬を殺すシーンがくると衝撃が大きい。短いワンカットながら背筋にぞわっとくる恐怖がある(馬を殺すのは基本、賛成できないが)。

イザベル・ユペールも狂気と紙一重の状態にいる妻をよく演じているが、娘のエヴァ役が非常に印象的だった。


posted by onion_slice at 22:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ
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