2006年01月21日

ヒトラー〜最期の12日間〜(2004,ドイツ)

原題"Der Untergang"

監督のオリバー・ヒルシュビーゲルって人は「es」撮った監督なのかな?「es」はかなり出来が悪かったんで「ヒトラー」も期待しない方がいいと思ったけど、やたら評判高いのと、他に見たいものもなかったから借りてみた。

駄作だ。
この監督やっぱりつまらないと思う。

作品の特徴としては、それまで絶対的な悪としか描かれてこなかったヒトラーとナチズムをわりと同情的というか、相対的な視点で撮っていて、アウシュヴィッツの問題なんかがまったく言及もされてないあたりは物議をかもしたようだけど、そこはまあ、皆が皆「シンドラーのリスト」を撮ればいいというもんでもないし。

ただ、ヒトラーと第3帝国が滅びる最期の内幕にスポットを当てたはいいけど、ストーリーテリングにも演出にもまったく工夫が見られず中途半端きわまりない。ヒトラー、ヒムラー、ゲーリング、ゲッベルス、アルベルト・シュペーア、ヒトラーの愛人エヴァ・ブラウンなどおなじみの人物が出てきて、型通りの忠誠、裏切り、崩壊の図式的ドラマが2時間30分という長ったらしさで繰り広げられる。主人公の秘書も役柄に必然性がなく、ただの棒読みキャラクターのようだ。そして脚本のまずさに追い打ちをかけるような弛緩しきった演出は、見ていて鬼気迫るものをまるで感じさせない。

ブルーノ・ガンツの演じるヒトラーのキレたキャラが多少面白いからそこそこ見れたけど、ヒトラーが2時間ぐらいのところで死んじゃうんで、残りの30分は退屈度が一気に加速する。くそつまらんけど2時間つきあったから最後の30分を放棄するのもしゃくだよな、というどーでもいいような義務感に従い、ようやく終わった瞬間は何とも言えない開放感だ。

過大評価されてる映画なことは間違いない。せめてドンパチシーンをもっと増やせば多少ともなんとかなっただろうに。

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2005年12月28日

バッド・エデュケーション(2004,スペイン)

キリスト系学校で神父による性的悪戯を受けた青年イグナシオをめぐる、ホモセクシャルをテーマにしたストーリー。

イグナシオ(フランシスコ・ボイラ)と神父アモロ(ダニエル・ジメネス・カチョ)、イグナシオの弟フアン(ガエル・ガルシア・ベルナル)とイグナシオの初恋相手エンリケ(フェレ・マルチネス)の4人の主人公全員がホモというかなりキツい設定だが、そこはさすがアルモドヴァルで、まるで女流監督が撮ったかのような繊細な演出のため、えげつなさを感じることはない(まあ、フアンとおっさん神父のキスシーンとかは、ベルナルのファンには多少衝撃的かもしれない)。「オール・アバウト・マイ・マザー」、「トーク・トゥ・ハー」、そして本作と、最近のアルモドヴァル作品はヘビーなテーマを扱っていながら、しっとりとした優しさにみちた独特の視点が素晴らしい贅沢なラブストーリーに仕上がっている。

とはいえ、もうちょっと女優が出てもよかった。「トーク・トゥ・ハー」でコーマ状態のバレリーナを演じた美しいレオノール・ワトリングが作中映画の衣装係としてちょい出演してるけど、遠目のショットだけなんで惜しい。

posted by onion_slice at 22:37 | Comment(0) | TrackBack(1) | ヨーロッパ
2005年12月23日

ロング・エンゲージメント(2004,仏)

監督ジャン・ピエール・ジュネ、主演はオドレイ・トトゥという「アメリ」のコンビだ。

第1次大戦中、恋人マネク(ギャスパー・ウリエル)の訃報を信じられず、本当は生き延びたのかもしれないという希望を抱き、悪い脚を引きずって田舎からパリまで何度も出かけマネクの消息を追う健気な女性マチルド(トトゥ)を描いた映画。

マチルドが親の財産で探偵を雇い、マネクと一緒に戦死したと伝えられる4人の兵士の足取りを追いながら、兵士たちの身に起こった真実が展開されていくというミステリー仕立てのストーリーだけど、マネクを待ち続けるマチルドのラブストーリーでもあり、同時に、かなりハードな戦争映画の要素もたっぷりだ。それでいて、この監督ならではのSF風おとぎ話っぽい雰囲気に仕上がっていて、なかなか楽しめた。

難点を挙げるなら、登場人物が多くて、最初の10分ぐらいでしっかり人物の顔と名前を一致させて頭にインプットしとかないと、話の展開についていけず追いていかれそうになること。それと、マネク演じるギャスパー・ウリエルの存在感が中途半端で、映画終わった後で顔を思い出すのも難しいほど印象が薄いってことかな。オドレイ・トトゥは不思議ちゃんな感じがイイ。

脇役ながらジョディ・フォスターも出てる。もういい年だけど、やっぱりいい女優だ。数カットですが、SEXシーンはかなりエロいです。

「アメリ」、見てなかったけど、オドレイ・トトゥ気に入ったんでチェックしとこうかな。

posted by onion_slice at 23:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ
2005年10月08日

永遠の語らい(2003,ポルトガル)

原題"Um Filme Falado"。邦題はちょっとピンとこない。むしろ英題"A Talking Picture"の方が語感的に好きだ。
監督は、たぶん現役で最長老の映画監督マノエル・デ・オリヴェイラ。

リスボンで歴史を教える女性学者ローザ=マリア(レオノール・シルヴェイラ)が幼い娘マリア=ジョアナを連れ、ポルトガルからパイロットの夫に会いにボンベイまで、マルセイユ、ギリシャ、トルコを経て紅海を進む船に乗るまでを描いた旅物語。
歴史の遺跡を訪れながら、ローザ=マリアがマリア=ジョアナに、ギリシャ神話、中世史、イスラムとキリスト教について教えていく母娘の二人旅という設定が微笑ましい。それ以上に、レオノール・シルヴェイラの美しさだけで完全に釘付けにされてしまった。

後半、船内で船長役のジョン・マルコヴィッチと、カトリーヌ・ドヌーヴを筆頭にした国籍の違う3人の女が登場し、母娘を交えて歴史とは?文明とは?言語とは?という話題について各自の母国語で話すシーンは非常に優雅。そして、最後のショッキングなラストシーン。それまでの緩やかな時間の流れを一気に覆すドライブをもった結末はほとんど戦慄的。
オリヴェイラの作品を一作一作見ているわけではないのだが、2001年の「家路」と並んで忘れがたい作品になった。そして、こういう映画を撮れる監督がまだヨーロッパにいるという事実を確認できて驚きの一作だ。

posted by onion_slice at 15:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ
2005年09月17日

愛の地獄(1994,フランス)

監督クロード・シャブロル、主演エマニュエル・べアール、フランソワ・クルゼ。
田舎にホテルを開業したポール(クルゼ)は、ある日妻のネリー(べアール)が男と一緒に泳いでいるのを目撃して以来嫉妬と猜疑に悩まされ、妻がつねに自分の知らないところで男と寝ているというパラノイア的妄想を抱いていく。

ストーリーは何の変哲もなく、途中何度となく物語の進むテンポの悪さに退屈感を感じたりもしたが、フランスの片田舎を風景にしたこの小さな悲劇は見た後にじわりと精神に響く重さを持っている。少しずつ狂っていく神経質な主人公と、夫の破滅を恐怖心と不安とともに見守る妻という、夫婦が崩壊する姿をとらえた残酷な視線が独特だ。
主人公の妄想が現実の中に侵入してくるぐじゃぐじゃのカオス状態の描き方がうまい。特にラスト近くの、カミソリを小道具に使ったシーンは見事。

決してスカッとする映画じゃないが、映画見てこうしたずっしりと重い余韻に浸るのもいいかもしれない。

posted by onion_slice at 02:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ
2005年08月13日

白と黒の恋人たち(2001,仏)

監督フィリップ・ガレル、出演メディ・ベラ・カセム、ジュリー・フォール。
かつて恋人がドラッグにより死んだことをひきずる若き映画監督フランソワが、ドラッグの恐ろしさをテーマにした映画をつくろうとする。主演女優に選んだ新たな恋人リュシーはドラッグで死んだ女の激しさを演じる役の重さに耐え切れず、プレッシャーからこっそりドラッグに手を染める。また、フランソワも映画の資金を得るため、裏社会にコネをもつシャスという男の下でドラッグの密輸に協力し、作品をつくることに矛盾を感じており、映画製作が行き詰まりに陥っていく。

題材の物憂さとモノクロフィルムの重層感が織りなすガレルの映画空間は独特な美しさをたたえている。作品の目新しさや、表現形式に対する革新的なアプローチ等があるわけではないが、現在のフランスでは最良といいうる正統な映画作りに挑んでいるのがこの監督の良さだ。男女間の視線や息づかいといった、映画の本質的な契機を大切にする彼の昔気質な姿勢はもっと他のフランスの若手に見習われてしかるべきものだと思うが、こうした存在はますます希少になってる。

「白と黒の恋人たち」(邦題はあまり好きじゃないが)は傑作と言いうるほどのクオリティには達してないにせよ、かつてのヌーベルバーグを彷彿とさせる美しさが堪能できるだろう。

posted by onion_slice at 23:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ
2005年07月10日

息子のまなざし(2002,ベルギー、フランス)

「ロゼッタ」と「アンファン」でニ度のカンヌ最高賞をかっさらったベルギーのジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟作品。少年院出所者の訓練学校で働く中年男オリヴィエの木工教室に、彼の息子を殺した少年が志願してくる。一度は申し出を拒否するが、自分でもわからない理由から少年を木工教室にいれ、訓練を受けさせることを決意する。

被害者の遺族が直面しなければならない巨大な喪失感と、施設で罪を償えば加害者が社会復帰してくることに対する行き場のない怒り、そして実際に自分の身内を殺した者を目の前にして罪を赦すということの想像を絶する苦痛、といったテーマがドラマ的展開を完全に排してひたすら寡黙につづられる。主人公オリヴィエの、静かな外面に覆われた激昂する感情が、揺れ動く不安な心理を追うようなネオリアリズム流の手持ちキャメラでつきつけられ、「自分がオリヴィエの立場だったらどうするだろう」というリアルな共感を抱くことを可能にしている。なかなか自分の素性は打ち明けないのだが、少年とサッカーゲームをしながら、なぜ少年院に入ったのかを聞く際の抑えがたい感情をゲームに霧消させるあたりの演出は鬼気迫るものがある。

小粒な作品だが、こうした解き難い感情の不快なもつれという、人生につきまとう負の局面を直視することのできるまじめな作品をつくれるダルデンヌ兄弟は貴重な存在ではある。

posted by onion_slice at 17:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ
2005年05月07日

トーク・トゥ・ハー(2002,スペイン)

昏睡状態のバレエ・ダンサー、アリシアを看護し続ける青年ベニグノ、闘牛の試合中牛に突かれやはり昏睡に陥ったリディアに付き添う旅行記者マルコ。

ペドロ・アルモドヴァルの「トーク・トゥ・ハー」は、植物のように眠り続ける女に向かって語り続ける男の愛の物語だ。それと同時に、ベニグノとマルコの間の、同性愛的な契機をはらんだ友情の物語でもある。
「オール・アバウト・マイ・マザー」とは違い、主人公が二人の男性でありながら、こんなにもしっとりとした、フェミニティあふれる繊細な作品に仕上げるあたり、アルモドヴァルの稀有な手腕にあらためて納得させられる一作だった。

posted by onion_slice at 22:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ
2005年03月06日

ピアニスト(2001,フランス、オーストリア)

「戦場のピアニスト」とか「海の上のピアニスト」とか似たような題名の作品が多いが、こちらは単なる「ピアニスト」です。監督はミヒャエル・ハネケ。原作はノーベル賞獲ったオーストリアの女流エルフリード・イェリネク。
超自我的な母親と二人暮しの女ピアニストで、音楽学校で教鞭を振るうエリカ(イザベル・ユペール)は満たされない性欲をポルノ鑑賞や覗き見や痛みを伴う自慰行為で癒していた。そんなある日教え子の青年に慕われ、彼を自分の長年溜めてきたヘンタイ趣味でコントロールしようとする。
トイレで青年のペニスをまったく表情変えずにしごきだすシーンからサドなのかと思いきや、手足を縛って殴ってくれだの母親の前で陵辱してくれだの危ないマゾ願望をさらけだしてきて、この当時ですでに50近いイザベル・ユペールだが、性的ノイローゼの役に絶好のはまり役だ。個室エロDVD 鑑賞BOX?(日本にはいっぱいあるが、ヨーロッパにもそんなのあるんだね。。)で男の客の使用したティッシュの匂いを嗅ぐあたりの倒錯ぶりをあんなにもデッドパンな顔でこなせる女優はそうはいないだろう。
話としてはありがちなんだけど、シューマンとかシューベルトの華麗なピアノ曲の中にポルノ映画のショットやオナニーシーンとかを併置するシックな感覚(ちなみにシックはchicじゃなくてsickだ)が独特な作品だ。
posted by onion_slice at 20:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | ヨーロッパ

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